【書籍レヴュー】

「大鮃」 藤原新也著

11月に不思議なご縁で、 作家・藤原新也さんの新作「大鮃」の原稿推敲のお手伝いをさせていただきました。昔からずっと読んでいる作家・藤原新也さんからのオファーというのは、 私にとって夢のような出来事でした。作品は無事出版され私も完全版を拝読した…

23「夢は9割かなわない」弘兼憲史

夢は見るものであり誰でも夢見ることができる。 しかし、目標を実現するにはそれなりの戦略が必要である。 この本に書かれていることを要約するとこんな感じだろうか。 実に気持ちがいいタイトルだ。 私は昔も今も「夢は持った方がいい」「夢見ることはいい…

22伊坂幸太郎 『あるキング』

自分に子供が生まれて人生の新たな展開に思慮をめぐらせ、 あるきっかけでシェークスピアを読み直して感銘を受け、 よく描く仙台市の新名物・楽天イーグルスを題材にして何か書こうかな・・・ という著者の日常・発想方法が如実に伝わってくる気がする本であ…

21『終末のフール』(伊坂幸太郎)

【感想】 「隕石の衝突で、あと8年後に世界が終わる・・・」そんな衝撃の発表により、人間社会は秩序を失い、暴徒と化した人間によって 世界は崩壊し、多くの人が命を失った・・・5年が経過し、凄惨な生き地獄を生き残った人々が、 残りの3年をどう生きる…

20『砂漠』 井坂幸太郎2008実業之日本社

皆が過ごしている何気ない日常を描くときほど、作家の技術が問われるのかも知れない。SFのように作者が持っている唯一無二の世界は、 それ自体が完成されたオリジナリティであるからまんまで成立する。 読者にとってはその世界が「好き」か「嫌い」かなのだ…

『カフェー小品集』嶽本 野ばら

「恋」について、美文を交えて思考を燻らせるには絶好の一冊。 個人的には 昔好きだった喫茶店が舞台になっていたこと。 そして、ここに書かれている世界観の中に10年ほど前、自分も住んでいたことを思い出した。

19『すきまのおともだちたち』江國香織(2005/白泉社

『旅はおさんぽとはちがうー。ピクニックともちがうー。 遠足ともちがうー。引っ越しともちがうー。ちがうったらちがうー。 旅は迷子とおなじー。生まれるのとおなじー。死んじゃうのとおなじー。 忘却ともおなじー。おなじったらおなじー・・・』(本文中よ…

18『昭和史』半籐一利 平凡社2008

この本の感想を一言で語るのは確実に不可能である。 日露戦争、日中戦争、太平洋戦争、満州国、朝鮮併合、ノモンハン、大東亜共栄圏、 陸軍、海軍、内閣、天皇、マスコミ、外交、そして国民意識など、 1926年から1945年に至るまでのさまざまな視点から語られ…

17『東京バンドワゴン』 小路幸也

明治中期からある「東京バンドワゴン」という変わった名前の古本屋。 営む堀尾家は4世代8人家族。 3代目・江戸っ子気質で頑固一徹の勘一。 その息子で「伝説のロッカー」と呼ばれるミュージシャン我南人。 さらにその息子で大学講師を辞めフリーの物書きを…

16『剱岳 点の記』 新田次郎

「秘境」と呼ばれる場所が世の中から無くなって久しい現代。 この物語は日露戦争後のナショナリズムが高まりを見せる明治中期、 今や陸軍の管轄となった参謀本部陸地測量部によって国内の地図はほとんど作られたが、富山県に連なる北アルプスの立山連峰には…

15『イエスの生涯』 遠藤周作

―「愛」は多くの場合、現実には無力だからだ。現実には直接役には立たぬからだ。−―人間は永遠の同伴者を必要としていることをイエスは知っておられた。自分の悲しみや苦しみを分かち合い、共に泪をながしてくれる母のような同伴者を必要としている。−(共に…

14『風林火山』 井上靖

「勘助は長いこと身動きしないでいた。 天文12年初めて武田家に仕えて以来二十年近い歳月が流れている。その長い歳月を埋めているものは大小の合戦のみであった。合戦以外何もなかった。大小の石がごろごろ転がっているように、合戦が歳月の上に転がってい…

13『夢をかなえるゾウ』 水野敬也 飛鳥新社 2007

友人のN君から頂いた一冊。ストーリーは ある成功者のパーティーに参加して、自分のみじめさを痛感したしがないサラリーマンの青年。「成功したい!」という強い願いは、像の形をしたインドの神様ガネ―シャを呼び込んだ。 甘党でなぜか関西弁を話すこの神様…

12 「ララピポ」奥田英朗 (幻冬舎2008/8)

「この人たちはどうしているのかなー。 ふとそんなことを思った。 世の中には成功経験のない人間がいる。 何かを達成したこともなければ、人からうらやましがられたこともない。 才能はなく、容姿には恵まれず、自慢出来るものは何もない。 それでも人生は続…

11 「魔王」伊坂幸太郎 講談社 (2005/10)

「でたらめでもいいから、自分の考えを信じて対決するんだ」迫りくる全体主義の中で、個人は何ができるのか?が根底のテーマ。 独裁者・犬養に立ち向かう2人の兄弟を通して、読者は 「国家」「政治」「民主主義」「全体主義」「公益」「個人の幸せ」などにつ…

10 「血の騒ぎを聴け」宮本輝 新潮社 (2004/05)

宮本輝の今までの軌跡を、本人の日記やエッセーなどを通して伺い知れることのできる一冊。普段は表舞台に出ない作家の、負けずぎらいで熱中すると激しくのめり込んだり、 時としてものぐさな一面など、非常に人間臭い部分をかいま見ることができる。また同業…

9『ローマから日本が見える』塩野七生

「指導者に求められる資質は次の5つである。 知力・説得力・肉体上の耐久力・自己制御の能力・持続する意思。 カエサルだけが、このすべてを持っていた。 イタリアの普通高校で使われている歴史教科書から」 ~本文中よりの引用〜高校時代に作家・塩野七生の…

8 『仕事、三谷幸喜の』 三谷幸喜(角川出版)

手元にあるのが、平成12年出版のものなので随分と前の作品だ。彼の小学校から現在(2000年)までの全作品を、本人の解説付きで 知るころが出来るファンにはたまらない一冊。彼が思う面白さのツボ、尊敬するニール・サイモンや、ビリーワイルダーなどの 先人…

7『荒野へ』ジョン・クラカワー

公開中の映画「into the wild」の原作である。 (概要は、映画レヴューを参照頂きたい)「何故クリスマッカンドレスはあのような旅に出て、 そして何故死んだのか?」この謎に対し、家族や関係者などから十分な取材し、 クリスの旅の軌跡を実際に追い、彼が残…

6『グラスホッパー』伊坂幸太郎

読み出し数行で、異常な世界での展開の早さと緊張感に圧倒される。 もしもこんなシチュエーションだったら面白いのでは・・・という漫画的な発想から書かれたような印象の一冊。教師をしていた鈴木は、妻を無惨な交通事故でひき殺された。 犯人はドイツ語で…

5『死神の精度』 伊坂幸太郎

音楽を愛し、渋滞を嫌う男。 千葉と名乗る死神の目的は、選考された人間が死ぬべきが否かを調査し報告すること。 彼が「可」と判断をくだせば、その人間は7日で死を迎えるのだ。人間の生死に関し無感情な千葉と、精一杯生きている人々のかみ合わない会話に笑…

4『チルドレン』 伊坂幸太郎

ユーモアあふれる洒落た会話。 交錯する過去と現在、散りばめられたトリック。 伊坂ワールドを味わうには格好の一冊。ストレートな感情表現と真理原則のような正義感で生きる破天荒な青年時代と そのまま大人になった家庭裁判所に勤める社会人時代の2部で構…

3『アヒルと鴨のコインロッカー』伊坂幸太郎

創元推理文庫 2006紙に書かれた字から物語を想像させる表現媒体「小説」の特性を最大限に生かした ミステリー作品。あらすじは 大学入学式前に一人アパートに引っ越してきた青年・椎名は、同アパートの隣人で 謎めいた男・河崎に会って早々普通ではない相談…

2『重力ピエロ』伊坂幸太郎

こんな小説が存在していたとは・・・読み出し一行目から作者のただならぬ文学的才能を感じさせる。 一瞬で伊坂ワールドに送り込まれてしまうのだ。 この小説は今を生きる我々に、小さな希望をもたらしてくれる。あらすじは 仙台市で起こった連続放火事件。 …

1「オーデュボンの祈り」伊坂幸太郎

これは凄い。自分の想像力を超えたところで話が展開している! まるで神話を読んでいるような錯覚に陥ったしまう程、多くのメタファーが散りばめられた作品。あらすじは 強盗を犯した主人公(伊藤)は、気がついたら見知らぬ島にいた。 そこは江戸時代から、交…