「大鮃」 藤原新也著

11月に不思議なご縁で、
作家・藤原新也さんの新作「大鮃」の原稿推敲のお手伝いをさせていただきました。

昔からずっと読んでいる作家・藤原新也さんからのオファーというのは、
私にとって夢のような出来事でした。

作品は無事出版され私も完全版を拝読したが、素晴らしい作品に仕上がっていました。

本自体も装丁家鈴木成一さん渾身のデザインで、「手に取りたくなるほど美しい仕上がり」です。

皆さんにも紹介したい一冊です。以下が私の読後感想です。



【書籍レヴュー】

「あなたの優しさは強さからくる優しさじゃなく弱さからくる優しさだと思います。

父性を求め極北の海に出会う老人と青年奇跡の一日。」(本の帯より)


アルケミスト」や「青年は荒野を目指す」のような
旅を通過儀礼として、青年が成長していく話なのだが、
本文中に散りばめられた作者の人生観、世界観をつづった言葉は
「経典」や「聖書」のように鋭く、重く、普遍性があり、心に響くものばかり。


読了後、数日間は夢に太古(主人公)の旅の様子が出てくるほど、
体の中に残る、まさに「血」になっていくような物語だった。

「どうやら人の命には四季という血が巡っているらしい」
という書き出しの一行から、一気に引き込まれまる。

若い主人公に対する老作家の温かい眼差し、
削ぎ落とされた簡潔で無駄のない文章、
クラシック音楽のような心地いいリズムの文体、
人物の感情をより豊かに表現する鮮やかな風景描写の数々。

世界中を回り、独特の世界観・死生観で多くの人々の心を打ってきた作者が

これからの時代を生きる若者たちに伝えたいこと残したいことを綴った想いが、
「遺書」のように色濃くと刻まれている。

言葉でまとめるのが難しいのだが、
神話が持つような普遍的な力を「大鮃」からは感じる。
同時に、上質なシルクに触れたような、肌触り感のある作品だと思う。


皆におすすめしたい作品である。