19『すきまのおともだちたち』江國香織(2005/白泉社

『旅はおさんぽとはちがうー。ピクニックともちがうー。
遠足ともちがうー。引っ越しともちがうー。ちがうったらちがうー。
旅は迷子とおなじー。生まれるのとおなじー。死んじゃうのとおなじー。
忘却ともおなじー。おなじったらおなじー・・・』(本文中よりの引用)

ふとした瞬間、「私」の前に現れては、またふと消える不思議な世界。
その世界に住んでいるのは何でも一人でやっちゃう「おんなのこ」と会話ができて車の運転もできる「お皿」。
ここでは、いつ訪れても時間は止まっていて、来るたびに「お客様」としてもてなしを受ける「私」。

とっても素敵な小説だと思う。「江國さんは本当にこの世界を見ているのでは・・・」と思ってしまうほどに、心地よいバランスのとれた「すきまのせかい」が描かれている。
「私」は齢を取っていくけど、「おんなのこ」はずっとそのままの姿でいる。
それはさみしくもあるけど、同時に幸せなことな気もする。
いいなあ・・・私もちょいと行ってみようか?
「おんなのこ」はいうだろう。
「お客さまは選べない。ちょっと変でも仕方ない」と。