【映画レヴュー】108『オール・アバウト・マイマザー』ペドロ・アルモドバル監督(スペイン 1999)

【スタッフ/キャスト】

脚本・監督:ペドロ・アルモドバルトーク・トゥ・ハー』『ボルベール/帰郷』
撮影:アフォンソ・ビアト『ゴーストワールド』『トーク・トゥ・ハー
美術:エマニュエル・ド・ショヴィニ 『やさしい嘘』
音楽:アルベルト・イグレシアス 『チェ 28歳の革命』


出演:セシリア・ロス 『月曜日に乾杯』

   マリサ・パレデス 『ライフ・イズ・ビューティフル
   
   ペネロペ・クルス 『ボルベール/帰郷』

   フェルナンド・フェルナン・ゴメス『蝶の舌

【感想】

アルモドバルは私も好きな監督だ。

ずば抜けたヴィジュアルセンス、
タンゴなどの官能さ溢れる音楽を起用する感性、
そして、女性の美しさ、女が生きる悲しさを
残酷な視点で描ける、
つまり「女をうまく描く」
監督だと思っている。

彼の作品に登場する男たちは
どこか暴力的で、自分勝手で
女の幸せを奪う存在として描かれることが多い。

その「必要悪」たる男に翻弄されながらも
必死に生きる女の人生を描くのが、この監督の持ち味だ。


オープニングで、点滴や医療機器を
物質をヨリで見せる辺りは素敵。
数年後の作品「talk to her」でも
病院のシーツを美しく見せるあたりは変わらない。

また、自身も演劇をしているだけあって
本編中に舞台を挿入するのが上手い。
劇中の中にさらにフィクションを織り込む
王道の手法は、メインストーリーの登場人物に
共感させたり、「観客」という立場から一体感を
感じる効果を得ている。


そして、この監督相変わらず残酷な物語を生み出す。
開始20分以内で、たった一人の最愛の息子の命を奪い
さらにその心臓を臓器移植されるとは……

しかも、息子との回想シーンもその後なく
息子の命は事故で無残にも奪われたという
事実を動かす気がないという冷酷さ。(ホメ言葉)

彼の音楽センスもなかなかだと思う。
かなりのシーンに音楽が引かれているが
観客のストーリーに入っていくストローク
優しく後押しするように、曲をつけている気がする。


彼が作る絵も好きだ。
例えば、売春婦の巣窟のような場所から
主人公が乗ったタクシーが通りすぎる時に、
その傍であどけない売春婦の女の子2人が
手を付き合って遊んでいる様子は、
娼婦のあどけなさや、幼さ、彼女たちの
存在に対する監督の温かい視点を感じる。


主人公マヌエラの元夫の子供を身ごもった
修道女ロサの人生も残酷だ。
ペネロペ・クルスの可憐で美しいビジュアルが
その運命の儚さを一層、際立させる。

自分で脚本を書いて、自分で監督するというスタイルも
私が彼に敬意を払っている一つだ。
自分が描きたい事、表現したいことを
ショービジネスの中で、きちんとできているのは
素晴らしい。

こういう監督がいると、自分ももっと頑張らないと
と奮い立つ。