93『理想の女(ひと)(A GOOD WOMAN)』(イギリス/スペイン/イタリア/アメリカ/ルクセンブルク/2005)
【スタッフ】
監督:マイク・バーカー『完全犯罪 』
原作戯曲:オスカー・ワイルド『ウィンダミア卿夫人の扇』
脚本:ハワード・ハイメルスタイン
撮影:ベン・セレシン『トランスフォーマー/リベンジ』
音楽:リチャード・G・ミッチェル『バジル』
【キャスト】
メグ・ウィンダミア:スカーレット・ヨハンソン『ロスト・イン・トランスレーション 』
ステラ・アーリン:ヘレン・ハント『恋愛小説家』
タピィ:トム・ウィルキンソン『フル・モンティ』
ダーリントン卿:スティーヴン・キャンベル・ムーア『バンク・ジョブ』
ロバート・ウィンダミア:マーク・アンバース『パイレーツ・オブ・アトランティス』
【感想】(ネタばれを含みます)
とにかく面白い。
オスカー・ワイルドの代表作『ウィンダミア卿夫人の扇』を
1930年代のヨーロッパ社交界に作り変えられた脚本は、
原作ありきと言えども、改めて素晴らしい出来である。
後で明らかになるさまざまな仕掛けの出来もさることながら、
見る側が感情移入するキャラクターを徐々にずらして行き
(それぞれの人物がちゃんと描かれているから出来る芸当)、
最終的に嫌悪の対象であったアーリンの内面へと仕向ける展開は、
そうそう書けるものではない。
加えてこの脚本、主要人物の描写がとても丁寧である。
全体的を通して、一つ一つのセリフを大事にしている印象を強く受けるのだ。
例えば、ヘレン・ハントとトム・ウィルキンソンとの、
人生の酸いも甘いも経験した成熟した大人だから言えるセリフの掛け合いは、
2人が口が開く度に「今度はどんな言葉を生み出すのだろう?」と
思わず期待してしまう程に、人間臭く、哀愁に満ち溢れ、時に洒落ている。
(この2人の掛け合いだけでも一見の価値がある。)
この描写力は「この世界に生きる人々」に対する、
作り手の、時に鋭く、時に優しいまなざしから生まれるものなのだろうか。
「永遠の愛」「親子の絆」「男と女の性」などがよく盛り込まれた脚本の上に、
名優たちの味のある演技、イタリア・アマルフィの幻想的な風景、
望遠を多用した絶妙な撮影技術、そして貴族達の絢爛豪華な生活の細かい描写が
積み上げられていくことで、見る者を容易にフィルムの中の世界に誘い、
強く魅了する。
また、いい作品で出会えたことに深く感謝する。
【総評】☆25STARS☆ (各項目5点満点で計30点)
脚本★★★★★
演出★★★★
役者★★★★
撮影★★★★
美術★★★★
音楽★★★★
「映画が好きです。」