6『カルメン』(DVDオペラコレクション/ウィーン国立劇場/1978)

【スタッフ】
作曲:ジョルジュ・ビゼー
指揮:カルロス・クライバー
演出:フランコ・ゼッフィレッリ
演奏:ウィーン国立歌劇場管弦楽団・合唱団/ウィーン少年合唱団

【キャスト】
カルメン:エレーナ・オブラスツォワ(メッツォ・ソプラノ)
ドン・ホセ:プラシド・ドミンゴテノール
エスカミーリョ:ユーリ・マズロク(バリトン
カエラ:イゾベル・ブキャナン(ソプラノ)


【感想】(ネタばれを含みます)
その幅、高さ、奥行き・・・
ここにしか生まれない芸術の存在が約束されているかのような
圧倒的な存在感を放つステージの上で繰り広げられる、
豪華絢爛かつ現代にも通じる、運命に翻弄された男女を紡ぐ永遠の悲劇。
それがこのカルメンだ。

その昔、ニーチェがこの戯曲を20回も見たという逸話もうなずける程の素晴らしい曲目である。

オーケストラ、小道具、舞台装置、衣裳、そして歌い手と、
ここに登場するものは私のような「オペラ素人」の目にはどこを見ても隙のない
「完全体」の芸術が存在しているように見える。

小学校の頃、多くの女子に混じって男一人、
自由時間をすべてソプラノ謳いに捧げた合唱団体験を持つ身としては、
あれだけの感情表現を乗せながらも、
純粋に音として美しい響きを生み出す歌い手達は人間を超えた存在に映った。

加えて現在は映像畑にいる自分からすると、
衣裳やセットの懲り具合や空間の使い方が非常に映画的である印象を受けた。
本作の演出家・フランコ・ゼッフィレッリについて調べてみると、
かなりキャリアの長い映画監督であることが分かり、その理由に納得。

1978年当時に、舞台を生で見た人々がうらやましくなるような作品であった。

この素晴らしい作品を初めて世に産み落とし、若くして急逝した作曲家ビゼーに深い感謝の念を捧げたい。