38『レインフォール 雨の牙』マックス・マニックス監督

【スタッフ】
原作:バリー・アイスラー
脚本・監督:マックス・マニックス 『トウキョウソナタ』(脚本)
撮影:ジャック・ワーレハム
美術:山崎秀満『サウスバウンド』『間宮兄弟
音楽:川井憲次スカイクロラ』『大日本人


【キャスト】
ジョン・レイン:椎名桔平
ウィリアム・ホルツァー:ゲイリー・オールドマン
川村みどり:長谷川京子
タツ柄本明
優子:清水美沙
川村安弘:中原丈雄
ヤクザ:瀬戸口剛


原作は『雨の牙』『雨の影』『雨の罠』『雨の掟』などシリーズ化されベストセラーとなっている元CIA工作員であるバリー・アイスラー作品。
これだけのシリーズが出ているところを見ると、原作はかなり面白いことが予想される。

あらすじは
闇社会で生きる日系アメリカ人ジョン・レインは凄腕の殺し屋。
受けた仕事は一度も失敗したことがない。
今回の依頼は東京・ターゲットは国土交通省の高級官僚「カワムラ」。
彼を自然死に見せかけて、所持しているUSBメモリを奪うこと。
レインは今回も問題なく任務をこなしたかに見えたが、肝心のUSBメモリは見つからなかった。
任務に失敗したレインは一転して追われる立場となる・・・


(以降ネタばれを含みます)
この作品は厳しい。

日本政府の監視カメラにCIAが入り込むとか、
我々は全国数万台という防犯カメラによって絶えず観察されているとか、
CIAが闇取引でレインを間接的に雇っていたとか、
語られている事実だけ見れば、日本に住むものとしてもゾッとする内容が多い。
しかし、これは映画である。その事実を映像表現によって観客に伝えなければならない。
この監督は残念ながら、その「モノの見せ方・伝え方」の力が著しく不足している。
(デヴュー作品ということを考えれば仕方ないかもしれないが)

同様に脚本も非常に厳しい。
例えばカワムラが持っていなかったUSBメモリのありかは、ほとんどの観客が普通に気づくはずなのに、日本警察もCIAも暴力団も誰も気づかない。最後にレインが発見するのだが「国家の頭脳がそこまで馬鹿ではないだろう」と思わずつぶやきたくなる。(監督自身そう思わなかったのだろうか・・・)
またそのUSBメモリに映っているデータは、実は国土交通省汚職の記録である。
「日本はアメリカの人口の1/3、国土はわずか5%しかないのに、公共事業費は、1.5倍も使っている。その予算は、国土交通省が握っている・・・」
だから同省の弱みを握ればいろいろやりやすくなるというのがCIAや暴力団が血眼になってメモリを探す理由とされている。しかし果たしてそうだろうか・・・とまた首を傾げてしまう。他にも上げればきりがないが総じて
この脚本はどれを映画でどのタイミングでどう見せるか?という「見せ方」の計算がなされていないのだろう。

加えて、編集点もかなり?な部分があり、劇場で見せられたオフライン作品という印象が強い。
細かい点だと国家機密が保存されているマスターコンピューターがSONYの家庭用VAIOというのはまた首をかしげたくなってしまった。(いくらsony picture製作といえどそれはないだろう)

一方で椎名桔平の冷静な殺し屋や柄本明の偏屈刑事っぷり、そして友人の瀬戸口剛くんのチンピラは観客を魅了するものがある。
また外国人から見た原色に溢れる東京の夜景絡みのシーンはよく撮れていると思し、
ステディーを多用して室内のシーンなんかもなかなかいい。



【総評】☆13STARS☆ 
脚本★
演出★
役者★★★
撮影★★★
美術★★
音楽★★★
(各項目5点満点で計30点)
 それでも・・・やっぱり映画が好きです