30『転々』 三木聡監督

出演:オダギリジョー 三浦友和 小泉今日子 吉高由里子 岩松了
   松重豊 ふせえり 広田玲央名

原作:藤田宜永
脚本:三木聡
撮影:谷川創平
音楽:坂口修
録音:瀬谷満
照明:金子康博


あらすじは
借金を払えない大学8年生(オダギリジョー)が、その取立人(三浦友和)から提案されたのは、
散歩に付き合ったら100万円あげるという夢のような話だった。
目的地、霞が関を目指して2人の無期限の散歩が始まった。

だらだらと散歩をしているうちに、普段は話せないような話がすらっと出来ることは多くの人が経験していることだと思う。
吉祥寺、阿佐ヶ谷、新宿などの分かりやすい風景が多く出てくるので、散歩する2人に観客は親近感を感じる。
これらによるちょっとした「旅感覚」を感じさせながらの、話の進め方は観客から距離が遠すぎず、近すぎず、絶妙な距離の世界観を作りだしていると思う。

三木聡演出ということで毎度のごとく全編にしょうもない「小ネタ」が散りばめられているが、これは好きずきだろう。

この作品で印象的だったのは、「中年」という年齢になっても、凛とした美しさを感じる三浦友和の品のいい演技と、入念に作り込んだ美術セット・衣装である。
三浦演じる中年男は、サラ金の取り立て屋で、前日に妻を殺したという設定にしては冷静すぎる部分が非常に気になったが、そこは脚本上の問題(設定)であると思う。
彼の表情には、過剰さや多感情などの無駄がなく、2時間見ていて飽ることがない魅力を持っている。

小泉今日子演じる愛人が住んでいる家セットの作りは、色使いや間取りなど、どことなく愛情が感じられる作りになっていて、疑似家族として交流を深めていくシーンを強く後押ししてくれる。

坂口が奏でる音楽(ピアノソロだろうか?)もどことなく切ない感じがよく出ていて、
いいところでの話の幕引きもあり、見終わった後にじんとした気持ちが残る。


【総評】☆19STARS☆ 
脚本★★★
演出★★★
役者★★★★
撮影★★
美術★★★★
音楽★★★
(各項目5点満点で計30点)
 それでも、やっぱり映画が好きです。