16『ブリュレ』林田賢太監督


脚本:林田賢太
キャスト:中村梨香 中村美香 平林鯛一 瀬戸口剛
撮影:早坂伸
音楽:水野敏宏


この日記でも何度か扱っている作品。

あらすじは
13年ぶりに再会した一卵性双生児の美しい姉妹。

その出会いはやがて、血の記憶からなのか。

互いに強く惹かれあうがゆえに起こる「放火事件」「失踪」「秘密の告白」。

身も体も熱く焦がした2人が旅の終着駅で迎えるものは・・・。

悲しいまでに一途な姉妹の心情を、美しい風景と共に綴るひたむきな愛の物語。

公式サイト http://www.brulee-movie.com/

(以下ネタバレ内容を含みます)

同じ時に生まれた2人だからこそ、分かり合え惹かれあう独特の感情というものがあるのだろう。
それを想像させるのはやはりその容姿。
一卵性双生児を素で演じた中村姉妹は、その存在自体が作品に大きな輝きを与えている。

この作品、撮影が良い。
この2人を照らすライティング。父を殺してから放火を止められない姉・日名子(中村美香)の顔には光がほとんど当たることがなく、彼女が抱える心の闇を表している様。
一方余命幾分もない妹・水那子(中村梨香)には絶えず光があたり続け、美しくはかない印象を与える。まさに陰と陽の関係。

印象的なシーンがある。
旅の途中で宿泊した廃校で水那子が自分の病気を男(瀬戸口剛)に告白する。
片足で立っている男は顔を木琴に向けたまま、ただ鍵盤をたたいている。
その乾いた音、外から差し込む青白い外光、時間が止まった空気を感じる教室。
沈黙する2人。
セリフ回しは決してうまくないが、「絵で何かを伝える」という映画の醍醐味を感じるカットだと思う。

この作品、少女時代特有の「2度と訪れない美しい時間」がよく出ている。
雪山の中で、ふざけあう所、夕暮れの電車の中で2人が髪をしばりあいっこする所など。
ある人はこれを懐かしみ、またある人はこの時間にあこがれを抱くだろう。

編集もよい。極端にカット終わりを短くすることの繰り返しによって、観客は感情を入れる時間を奪われる。同時に、双子の必死に生きている様を盗み見しているような錯覚にさえ陥る。この効果は大きい。
加えてテンポよくつながれていくカット群からは、2人が生き急いでいる感じすら出ている気がする。
観客がが見守る中2人が逃避行の果てにたどりついた海岸。
そこで日名子からでてくる「私を生んで」という一言が観客の心を強くさす。
75分という尺を最大限に生かした効果的な編集であると思う。

【評価】 演出2.5 役者4 撮影4 美術2 音楽3.5 脚本3 合計 19/30 やっぱり映画が好きです。