86『姉のいた夏、いない夏(THE INVISIBLE CIRCUS)』(2001・アメリカ)
【スタッフ】
監督・脚本:アダム・ブルックス『ラブ・ダイアリーズ』
原作:ジェニファー・イーガン『インヴィジブル・サーカス』
撮影:ヘンリー・ブラハム 『 ライラの冒険 黄金の羅針盤』
音楽:ニック・レアード=クロウズ
【キャスト】
フィービー:ジョーダナ・ブリュースター『テキサス・チェーンソー ビギニング』
ウルフ:クリストファー・エクルストン『エリザベス』
フェイス:キャメロン・ディアス『メリーに首ったけ』
【感想】(ネタばれを含みます)
「美は神に近いのよ。だから美しいものは危険なの・・・」
60年代後半のアメリカ。
自由思想が強く理想主義を貫いた父の影響を濃く受けた姉のフェイスは、
ヨーロッパの旅先で謎の死を遂げ帰らぬ人となった。
7年後、姉を慕っていたフィービーは大学入学を前にして、ある決意をする。
それは姉が旅先から送ってくれたポストカードを頼りに、
彼女の旅の軌跡を追い、
何故姉が死んだのか?を確かめる旅にでることだった・・・。
この映画は世間での評価がかなり低いようだが、私は好きだ。
理想に燃え己を信じ社会変革を強く願うも、
やがて「世界」に行き詰まった若者達が持つあやうさ。
旅先で出会った男女が「運命」という名のもとに惹かれ相手を求める独特の空気。
愛する人を死なせてしまった苦しみからいつまでも逃れられず苦しむ人々。
そして、心の苦しみの救いを求めて当てもなくさまよう目的のない若者の旅。
(「若者の旅」を主題にした映画『Into the wild』もまた傑作である。
http://d.hatena.ne.jp/cyuski/20081015/1224087797)
この映画はそのような「弱い人間」たちの感情に彩られている。
その弱さ故に、素直になれなかったり、現実から逃げたり、無理に強がったり・・・
その姿はとても美しく、とても悲しい。
若い時に長く心揺さぶられる旅を経験した者ならば、
作品に描かれている「若さ故に美しいもの」が、
かつての自分と重なる部分に気づき、
己が旅をしていたその時の感情が体内を駆け巡るだろう。
それぞれのキャラクターの心情を想像しながら、
見ることができれば美しい映像や音楽と共に、
フィービー、フェイス、そしてウルフの心の旅に触れることができる気がする。
【総評】☆22STARS☆ (各項目5点満点で計30点)
脚本★★★★
演出★★★
役者★★★★
撮影★★★★
美術★★★
音楽★★★★
「映画が好きです。」