78『裸足の1500マイル(Rabit-Proof Fence)』(2002・オーストラリア)

【スタッフ】
監督:フィリップ・ノイス 『今そこにある危機』『 ボーン・コレクター
脚本:クリスティン・オルセン
撮影:クリストファー・ドイル花様年華(かようねんか)』『2046』
音楽:ピーター・ガブリエル『 最後の誘惑』『バーディ』

【キャスト】
モリーエヴァーリン・サンピ
グレーシー:ローラ・モナガン
デイジー:ティアナ・サンズベリー
ネビル: ケネス・ブラナー『ヘンリー五世』(ハムレット)

【感想】(ネタばれを含みます)
己の無力さを無言で悟らせる険しく乾いた広大な大地と無限に広がる空は、
時に誰よりも人々の感情を豊かに表現してくれる。
その業はまさに神と呼ぶにふさわしい・・・


これはオーストラリアで社会問題になっている
「盗まれた世代」(The Stolen Generation)の実話を
元にした映画である。

1930年代・オーストラリア。
白人の種が優れているという優生学的思想が全盛な時代、
劣性である純血のアボリジニを放っておけば、適者生存の理由から絶滅してしまう為
アボリジニの子供達はその文化から隔離し、白人による再教育を施さねばならぬ
という国家政策が展開されていた。

先住民族保護法」により、白人から居住区から強制的に隔離され
再教育施設に入れられたアボリジニの3人の少女達が、
母親に会いたい一心で施設を逃亡。
1500マイルも離れた親元を目指し、懸命に歩いて行く・・・。


中盤戦までは、想像通りの逃避劇が展開されていく。
しかし旅が進んできた後半戦に入ると、3人の子供たちの演技の質が変わり、
緊迫感が増しスクリーンから目が離せなくなってしまう。
一体子供達にどんな演出をしたのだろうか。
すると、クリストファー・ドイルが見せる感情的な映像も
説得力を持って我々に迫ってくる。
子供たちの精神状態のように、
無駄のないほど研ぎ澄まされたピーター・ガブリエルの音楽も素晴らしい。

いい作品だ。

過去に起きた事実を風化させないという意味でも、
2003年にこのような映画が製作されたことは非常に意義がある。


【総評】☆22STARS☆ (各項目5点満点で計30点)

脚本★★★
演出★★★★
役者★★★★
撮影★★★★
美術★★★
音楽★★★★

「やっぱり映画が好きです。」