3安曇野ちひろ美術館 いわさきちひろ 長野県松川村



「平和で豊かで、美しく可愛いものが本当に好きで、そういうものを壊していこうとする力に限りない憤りを感じます」ーいわさきちひろ


松本駅から電車で約30分のJR大糸線穂高駅から自転車をこぎながら寄り道を重ね、2時間後にやっと到着したのがここだった。

絵本作家でもあったいわさきちひろさんの絵は児童館通いだった幼少の頃に多く見ていたはずだが、ほとんど覚えていなかった。
改めて大人になった目線からその作品群を拝見して、「自分には作れない世界観」に満ちあふれていることを感じた。

水彩を用いる彼女の絵は、背景はほとんどなく白地のままである。
その世界の中で、幻想的な色を持っているのが子供達である。
これが彼女の子供達に向ける目線であると思う。
特別で、透明感があって、どことなく浮世離れしていて純粋、
そして何よりも愛くるしくてたまらない存在であると。

彼女の作品を見ていると、かつての失った自分自身をふと思い出す。

子供の頃、世界は毎日無限の広がりを見せていた。
新しい発見の連続で好奇心は休まる事なく、
時として詩人のように空気の色について考えたり、
またある時は、親に抱きしめられることだけをただ願っていた。
世界に希望のみを与える無垢な存在だった頃を・・・。


彼女は語る。
「こどものあどけない瞳だけが描きたかった。だから鼻も口も描くのが嫌だった。」


自分自身が子供だったころ、自分の娘・息子がが幼かった頃、そして日々出会う小さな愛くるしいきみたち・・・。

そんな「小さな神様」との交流を楽しむのには絶好の場所である。

お気に入りの『あごに手をおく少女』