1「加山又造展」 新国立美術館



「小さな世界を通してそこには私たちの住む世界のあらなる制限をこえた宇宙がなければならない」
加山又造

優れた表現者を知らずして、己の創造する世界の幅は広がらない。

2004年に亡くなるまで精力的な活動を行っていた日本画家・加山又造
彼の回顧展が3月2日まで新国立美術館で開催されていた。
http://www.kayamaten.jp/

伝統的な価値基準は大きく揺らぎ、欧米から新たな波が押し寄せてきた戦後。
日本画もその例外でない中、日本画自体の存在を問いかけることから画家人生が始まった加山の作品群は、実に多様であるにも関わらず実に日本的な美を内包している。

今回の展示は約100点。その中で個人的に強く惹かれた作品を何点か・・・。


まずは、シュルレアリズムの影響を強く受けている初期の「月と犀」。
生きる「悲しみ」と「普遍性」。そしてこの画の「青」に心奪われた。

彼の裸婦像を見ていると「日本人女性の美しさ」について深く考えさせられる。
乳首や爪の色がそれぞれの裸体によく映えるのも特徴の一つ。
その中で印象的だったのが、4人の女性が花吹雪の中で伸びやかに舞っている「はなふぶき」
この作品を見たときに、一番右に描かれた女性と目があった。
ほんのりとエキゾチックな顔立ちの彼女は、少し上目使いの柔らかい表情でこちらを見ている。しなやかな肉体は美しくもいやらしさがなく、手を伸ばせば消えてしまいそう。
こんな人を「天女」と呼ぶのだろうか、とふと思った。

「五感からときはなたれた空の世界の空間」と氏が語る水墨画

その中の作品「月光波濤」を目にすると、時が止まり、脳が壊れるようなすさまじい衝撃を受けた。作品に魂が抜かれ、完全に脳が覚醒して、自分の肉体を遊離している感覚に陥った。
描かれた世界観は、自分の想像力を超えた所に存在していた。心が震える。

表現するジャンルは違えども、このような素晴らしい作品を世に残してくれた先人に深く感謝したい。