28『裸の島』 新藤兼人監督
舞台:瀬戸内海の小島
制作:松浦栄策
脚本:新藤兼人
撮影:黒田清巳
音楽:林光
編集:榎寿雄
録音:丸山国衛
照明:永井俊一
第2回モスクワ国際映画祭 グランプリを受賞
あらすじは
瀬戸内海に浮かぶ、ある貧しい小島。ここに住むのは一世帯だけ。
この島には水がない。
生活用水も、そして農作物を育てるのに必要な水も
すべて別の島から船を漕いで運んでくるのだ。
この物語の主人公、中年夫婦は樽一杯に水を詰め込んで、
朝から晩まで必死になって農作物に水をやり続ける。
かつて日本に数多く存在した、現実をただ受け入れ歯を食いしばって生きる貧農の姿を
これほどにリアル描いた作品はそうないだろう。
一切セリフを排除した脚本、気が遠くなる程何度も映し出される重労働に耐える夫婦の姿、
本来、豊穣で祝う秋のくだりの極端な短い編集など
監督が仕掛けた斬新な演出方法は、観客にかつてないほどのリアリズムを与える。
そして役者の演技が銀幕の中で輝きを放っている。
言葉を奪われた中で、肉体の動きと表情をあますことなく利用して
貧農をみごとに演じきっている。
特に乙羽信子が作り出す、作品全体に流れている一本の張りつめた感情。
この環境から逃げられないし、そんなことを考えることもない。
諦めが世界を支配し、希望なんかそもそも存在することすら知らない。
それでも一生懸命働いて、家族が元気で生きているだけで幸せなのだという
「諦観・なし崩し的な世界観」を彼女は(あるいは夫も)持って生きている。
それが、「あの事件」を契機として、彼女は世界に初めて激情の牙を向ける。
心に長年溜まっていた「世界に抵抗する感情」が一気に激しく体内から噴き出す。
それを受ける夫・殿山泰司の表情。
そして彼女に対する島の答えは・・・
このラストシーンは、記憶に刻まれるほど印象的だ。
ちなみにその作品
スタッフわずか11人で瀬戸内海ロケを敢行。撮影期間一か月で500万円の予算で仕上げたことで、日本のインディペンデント映画の走りとしても評価が高い。
【総評】☆20STARS☆
脚本★★★
演出★★★★
役者★★★★★
撮影★★★
美術★★
音楽★★★
(各項目5点満点で計30点)
やっぱり映画が好きです。